近代史を基にした架空戦記、軍靴のバルツァーネタバレあらすじと評価。

近代ヨーロッパ史を基にした(と思われる)架空戦記、「軍靴のバルツァー」
『月刊コミック@バンチ』(新潮社)にて連載中のこの漫画がとても面白いので、レビューしてみました。
本編もさることながら、単行本後ろの近代の軍事事情や庶民事情がかなり面白いです。
軍靴のバルツァーとは
中島三千恒(なかじま みちつね)さんによる長編漫画。
『月刊コミック@バンチ』(新潮社)にて連載中で、作者曰く「架空の近世西欧風の戦争漫画」
この漫画の一番の特徴で魅力なのは、主人公の「ベルント・バルツァー」
漫画の主人公らしからぬ合理的で出世欲の強い(ただし意外と小心な)優秀な人物で、
作中でも上司から「人格を切り離し理に従う」軍人の成功例として評価されている。
(ただし、決して冷徹なわけではなく味方に対する情は深く、根は熱い模様。)
所属するヴァイセン王国で出世街道を邁進していたものの、
ある日同盟国であるバーゼルラントの士官学校へ軍事顧問として出向することになる。
しかしそこは超ド田舎の封建社会が残っており、バルツァーに馴染む合理的な社会とは程遠い。
そこで出会った生徒たちや、バーゼルラントの第二王子とかかわりながら、
ヴァイセン内で渦巻く陰謀や各国との戦争や政治闘争に巻き込まれていく。
というのがざっくりしたあらすじ。
漫画の魅力
早速この漫画の魅力を三つ紹介していきます。
漫画の魅力その1「架空戦記物として高いクオリティ」

なんといってもこの漫画の良い所は、架空戦記物とは思えないリアリティと読み応え。
もちろん漫画らしい設定(男装の麗人とか)も多いですが、
戦争描写だけでなく、国家間の複雑な関係性や政治、更にはこの世界の文明文化まで緻密に描かれています。
とまで言われていますが、実際にその通りだと思います。
まぁ一番楽しいのはやっぱり新しい戦術・兵器プレゼンをしながらバルツァーが逆転劇を繰り広げる戦争パートなのですが、
そのスパイスとして小難しい政治パートがよく効いているなと思います。
いわゆるなろう系もさっぱり読めて嫌いではないのですが、
やっぱりその地の文化・文明があってその上に立って歩く人間が構築されている作品は、
まるで実在する人物の話を読んだ後のような、後味の残る良さがあると思います。
漫画の魅力その2「緻密に描かれるミリタリ要素」

この漫画は、かなり丁寧に兵器類を描写しています。
月刊誌ということもあってか、かなり書き込みが凄いです。
また、兵器のグラフィックだけでなく、どういう兵器であるのか、
ものによってはどういう仕組みで動くのかをイラスト付きで解説してくれます。
近代兵器はかなり仕組みが複雑になってきて、文章だけだと理解できないものも多いのでこれは本当に助かります。
また、兵器だけでなく、近代戦術(新戦術)も紹介されます。
例えば、「密集した歩兵」「騎兵突撃」といった古い戦術に対して、
現代でも主流の「散会して遮蔽物に隠れながら射撃を行う戦法」や「鉄条網による騎兵の消滅」などが描かれていきます。
特に鉄条網については、騎兵が消えた原因はこれなのかー!と驚きました。
もちろん鉄条網が無くてもいつかは銃器の高速装填と射出が実装されて無くなってたような気はしますが、
まだ装填→射撃がそこまで早くなかった時代ではこれがかなり有効な防御柵になっていたんだと初めて知ることが出来ました。
漫画の魅力その3「政治」
この漫画の何よりの魅力は、複雑な政治や国際情勢を描き切っていることだと思います。
漫画特有の各国首脳の有能感や大胆行動、ガバガバ警備はありますが、
「遅々として進まない講和会議」をほとんど一巻使って各国の思惑や陰謀を描いていたりします。
主人公すら大国の上層部からしたら一個の駒でしかないというリアリティを感じることが出来ます。
作品のメイン舞台でもある、バーゼルラントも大国に挟まれる弱小国家として、
第一王子の苦悩や、第二王子が弱小なりに頑張っている姿などが徐々に明らかになってくると、
最初は古臭くて生意気なイメージの強い二人に対して好感が持てるようになっていきます。
まとめ
「軍靴のバルツァー」についてのあらすじと、その魅力についてまとめさせて頂きました。
今回紹介したところだけでなく、他にもキャラクターやストーリー等、
面白い所や魅力的なところは沢山あるので是非読んでみてください。
公式サイトでも試し読みできます。
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